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身体の不調やコリを感じたとき、多くの人はまずストレッチを試しますよね。
確かに筋肉を伸ばすことは大切ですが、
実はストレッチだけでは届かない身体の“支点”があります。
この“支点”こそが、筋肉の張力が集中し、慢性的な不調や痛みの原因となっていることも多いのです。
そこで今回は、その“支点”に張力が集まる仕組みと、
直接アプローチすることのメリットなどお話します。

🌀 張力は「交差点」に集まる──筋肉・関節・靭帯の力学的関係

整体で最初にチェックするポイントがあります。
それは「張力が集中している部分」で、特に肩回りや骨盤周りに多く点在しています。
ここは単に“筋肉が硬い”だけではなく、構造的に力が集まりやすい場所なのです。
具体的には、「関節の靭帯」と「筋肉の起始・停止にある腱」の部分です。

🔍 なぜ「関節」と「筋肉の起始・停止」に張力が集中するのか？

【１】関節は“構造の切れ目”
骨と骨のつなぎ目である関節は、筋肉の力が伝わる中継地点。
多方向から筋肉が関節を“綱引き”しており、張力が交差して集中しやすい場所になっています。

【２】起始・停止は“張力の支点
筋肉は腱を介して骨に付着し、動きを生み出します。
この付着部（＝起始・停止）は、筋の収縮や緊張による張力の支点。
ここに負担がかかると、こりや痛みの「根っこ」が現れます。

🧠 筋張力とはなにか？

「張力」という言葉は解剖学の正式な用語ではありませんが、生理学や整体・運動学では非常に重要な概念です。
筋肉・腱・靭帯などが、互いに引っぱり合っている状態の力を意味します。

筋張力には２種類あります：

・能動張力：筋肉が自ら収縮して生じる張力（例：腕を曲げるときの力）
・受動張力：外から伸ばされたときに発生する張力（例：ストレッチ中の抵抗感）

どちらも「張力ネットワーク」の一部として、身体全体に影響を及ぼします。

🦴 張力を支えている“構造”たち

筋張力は筋肉単体では成立しません。以下のような構造が、それを支えています：

・腱(筋肉と骨の接合部分でそれぞれ起始・停止が存在する）
筋肉の両端にあり、張力の負荷がかかる部分で「支点」のような役割。
緊張が抜けない筋肉の多くは、この腱が“固まっている”ケースも。
腱にも柔軟性が必要。

・靭帯
骨と骨をつなぐ安定装置。
関節の安定を保ちます。
腕の重さなどの重力に、また筋肉同士の引っ張り合い(張力)に日常的にさらされている場所。

🧭 ストレッチで“綱引き”は解消されるのか？

単純なストレッチでは張力の根源(靭帯や腱)には届かないことも多いのです。

多くのストレッチは、筋肉そのものを「伸ばす」ことにフォーカスしています。
たしかに筋肉は伸びますが、その張力(伸び)を支えているのは、
関節の靭帯や筋肉の起始・停止にある腱といった“支点”の部分です。

こうした部分に張力が集まりやすい、踏ん張る力がはたらきやすいため、
単純なストレッチだけでは張力の根源には届きにくい。

👐 整体ができること：張力への直接アプローチ

整体では、ただ筋肉をほぐすだけではなく、
張力が集まっている「構造の交差点」そのものにアプローチします。

・関節の調整
・起始・停止部のゆるめ
・靭帯のリリース
・張力ネットワーク全体の再構築

こうした施術により、からだ全体の力の流れが変わり、痛みや不調の根本改善につながります。

💡 おわりに：「張力ネットワーク」でからだを見る

私たちの身体は、腱や靭帯がそれぞれ“支点”となり、筋肉の張力を支え合うことでバランスを保っている構造体です。
この「引っぱり合いの関係」が、姿勢や動きの土台を作っています。
この引っぱり合いの関係、張力ネットワークのおかげで立ったり、座ったりできます。

しかし、この張力に偏りが生じると、
慢性的なコリや痛み、不調、そしてパフォーマンスの低下につながっていきます。

「ただのコリ」だと思っていた部分が、実は靭帯や腱に原因がある──
そんな硬さが整体でふと緩んだ瞬間、身体ははっきりと反応を見せてくれます。

たとえば、
・いつもより腕が軽く挙がる
・いつもより自然に歩ける
・呼吸が深くなる
・身体がひとつにまとまった感覚がある

力がどこから生まれ、どこに分散されていくのか。
それを感じるとき、**筋肉の“流れ”**が起き、身体の力が再び巡りはじめます。

そこに、整体の深さと面白さがあるのです。

📚 参考資料

1. Yasuda, A., et al. (2024).
   Effect of Static Stretching Duration on Blood Volume in the Achilles Tendon.
   Journal of Applied Physiology and Movement Science, 39(2), 115–122.
   → 静的ストレッチがアキレス腱の血流に及ぼす影響を検討。血流変化は認められず、腱には届きにくいことが示された。

2. Hotta, N., et al. (2022).
   Changes in Muscle Blood Flow During and After Static Stretching.
   Journal of Physiological Sciences, 72(1), 23–30.
   → ストレッチ中は筋血流が一時的に減少、解放後に反応性増加が起こるが持続性は低い。

3. Kjaer, M. (2004).
   Role of Extracellular Matrix in Adaptation of Tendon and Skeletal Muscle to Mechanical Loading.
   Physiological Reviews, 84(2), 649–698.
   → 腱や筋膜などの結合組織は低血流領域で、機械的刺激に応じた構造変化が起こる。

4. Magnusson, S. P., et al. (2008).
   Mechanical Properties and Collagen Content of the Human Patellar Tendon in Response to Resistance Training.
   Journal of Physiology, 587(Pt 1), 271–275.
   → 腱に柔軟性や構造的変化を起こすには、ある程度の荷重・刺激が必要。

5. Schleip, R. (2012).
   Fascial Fitness: Fascia-Oriented Training for Bodywork and Movement Therapies.
   → 筋膜・腱・靭帯などの張力ネットワークを扱う際、軽いストレッチだけでは変化が起きにくいとされている。